聴覚障害学生を受け持つにあたって

聴覚障害学生に対して円滑に教育・指導を行っていくためには、通訳者との連携や映像教材の文字化などお守りいただく必須事項がいくつかございます。ここでは最重要の事項をまとめました。ご一読いただき、聴覚障害学生を受け持つ際にはご留意ください。

ご留意いただく最重要事項

1. 教員・通訳者・聴覚障害学生は「チーム」です

教員・通訳者・聴覚障害学生はチームです。通訳者のみが情報を伝える責務を負うのではありません。教員は聴覚障害学生の特性に配慮しながら、自らの授業に工夫を加え、通訳者と連携して授業を十分に伝えられるよう努めます。また、通訳者に最大限のサポートを行ってもらうために必要な資料等を用意します。

一方、聴覚障害学生は、自分の障害特性に合った配慮や要望について教員と積極的に細かく話し合うよう努め、教員・通訳者の負担の軽減を図るとともに自分の修学環境は自分で整えていくよう努めます。このように、教員・聴覚障害学生・通訳者の三者が「チーム」となって動いてこそ、良い支援を実現することができます。

2.  質の高い情報支援のためには、通訳者との綿密な連携が必須です

大学・大学院の講義における通訳は、初めて聞く専門用語や一般的になじみのない話題にも即座に対応しなければならないという点で、非常に高度な内容になります。これを通訳者にのみに頼ることは、無理があります。なぜなら、教員はその学問分野での専門家であり、学生も継続的に学んでいるという意味では、共通の背景知識を持っています。一方で通訳者は、特定の学術分野ではなく幅広い場面で通訳を行うことを業務としているからです。また、必ずしも固定で同じ講義を担当するとも限らず、毎週通訳担当者が代わることもあります。そのため、背景となる情報やその場で前提となる知識に「ギャップ」が生じることも多く、これが大学レベルでの通訳が高度で、ときに困難を伴う一因となっています。

このことを逆に考えると、教員が聴覚障害学生支援プロジェクト室と連携・相談しながら、いかにこの「ギャップ」を埋めていけるかに、通訳の成否、聴覚障害学生に伝えられる情報の質が左右されます。聴覚障害学生にきちんと情報を伝え十分に教育していくためには、教員が通訳者を最大限に生かしていくという考えが不可欠です。具体的な連携方法は下記をご覧になり、聴覚障害学生支援プロジェクト室にもお問い合わせください。

3. 字幕つき教材を用意してください

文字通訳が話す速さについていくためには一定の要約を要します。しかし、音声教材は一般的に会話やナレーションに「ゆとり」のない構成になっているため対応が困難です。手話通訳の場合は、比較的容易に速さには対応できます。ところが、聴覚障害学生は手話通訳者と映像を同時に見ることは難しいため、内容を理解するという意味ではやはり困難が生じます。これは通訳者のスキルの問題よりも、教材の構造上の問題です。そのため、ビデオやDVD等は字幕付き教材を選択してください。現在では字幕のついたデジタル放送も始まり、これまでよりも字幕つき教材の用意が容易になっています。字幕をつけたままテレビ番組を録画し、授業で再生することも可能です。方法については、聴覚障害学生支援プロジェクト室にご相談ください。

教材が古い場合など、字幕つき教材の選択が不可能なときは、プロジェクト室が支援者を募集し事前にテキスト化を行うことが可能です。ご希望の方は、プロジェクト室まで映像教材をご持参のうえ、テキスト化を依頼してください。なお、この作業には多くの時間を要するため、2週間前までの依頼をお願いします。

4. 通訳者は専門職です

通訳者にはコミュニケーションを支援する専門職としての倫理綱領の遵守が求められています。一例として、授業で知りえた情報の口外や資料の二次使用などは固く禁じられていますので、ご安心していただき積極的な相談・打ち合わせを行ってください。一方、通訳者は教員と学生の間のコミュニケーションを支援するためにいますので、通訳以外のことを依頼しないようにしてください。

 

通訳者との連携方法

上述のように、聴覚障害学生に正確で十分な情報を伝えるためには、通訳者との連携体制の確立が重要です。連携には様々な方法がありますが、ここでは教員の方がご自身で実施可能な方法をいくつか挙げました。積極的に打ち合わせ等を行い、よい連携・協力体制を築いてください。

 1. 授業に関する資料を事前に提供してください

教員・学生と通訳者の間の背景知識の差がある上に、その場で即時に対応しなければならないことが求められるために、大学での通訳は高度な支援になります。しかし、その困難をカバーするよう教員側から積極的に働きかけることで、通訳者を助け質の向上に寄与することができます。

最も取り組みやすく、最も効果の高い連携方法が、資料を事前に提供することです。当日配布する資料や、パワーポイント、教科書の使用予定箇所の情報等を事前に通訳者に提供して下さい。可能であれば、3日前までを目標に準備をしてください。資料を事前に渡すことで、通訳者は前もって準備・学習をすることができます。また、頻出する語句を事前に通訳用PCに登録する、使用する手話表現を聴覚障害学生と事前に打ち合わせる等の準備も可能になり、支援の質が飛躍的に高まります。

大学では授業準備が直前になることも多々あります。しかし、たとえ1日前、1時間前であっても事前に情報をお渡しすることが何よりも重要です。資料の受け渡し方法等は、聴覚障害学生支援プロジェクト室にご相談ください。

2. 教室の電気を消さないでください

教室を暗転すると通訳が見えなくなり、その瞬間に聴覚障害学生への情報が遮断されてしまいます。教室の前方だけ暗くする、ハンディタイプの電気スタンドの使用を提案する等、聴覚障害学生・通訳者と相談をし、聴覚障害学生への情報保障を維持できるよう工夫してください。

3. 通訳者が最適な位置で支援できるよう調整してください

それぞれの通訳手段に最適な通訳位置があります。たとえばノートテイクの場合は、聴覚障害学生と支援者が3人並んで着席することが基本です。聴覚障害学生本人や支援者の申し出があれば、座席の調整・確保などにご協力をお願いします。たとえば、グループで座席を指定する場合は、聴覚障害学生だけではなく、そのグループ全体を席替え・移動させることで、通訳環境と授業の進行の両方を整えることが可能です。

聴覚障害学生に正確で十分な情報を伝えるためには、これ以外にも様々な配慮が必要です。ご自身の授業に合わせてご対応ください。詳しくはこちらに記載してあります。